おそらく最後(?)の日本海‐香住旅行

2008年8月7日

「いろいろ落胆した初日」


朝五時。
我が家恒例「五時起き旅行」は、今回も何の問題もなく始まった。
行き先は、兵庫県香美町香住地区柴山。
冬はカニ目当ての客で賑わう、日本海側の小さな港町だ。
初めて行った五年前は、瀬戸内海や大阪湾とは違う、日本海の透き通った青い海に感動した覚えがある。
果たして、今も美しい海なのか。期待に胸を膨らませ、片道五時間の車の旅に出発。

今回のメンバーは
運転手の父、
今回は助手席にてナビゲーター役(オーディオ機器の操作・カーナビの補佐(翻訳ともいう)・父の話し相手など)に徹する私、
高1の弟、
小4の妹、
近所の兄妹(中2と小3)、
の計六人。
近所の兄妹は、弟の二年下のラグビー部の後輩と妹の一年下の幼馴染で、これまでも家族同然の付き合いをしてきた仲。
本来は父と私と交代で運転するのだが、私が免許とりたてで、家族同然とはいえ、よその子をもしもの事故に巻き込むわけには行かないので、助手席に収まることに。

高速道路は、平日で朝が早かったおかげでスイスイと流れ、一時間ほどで道程の四分の三を通過。
しかし既に経験済みとはいえ、播但道終点の和田山から豊岡市街を抜けて柴山へ行く、残り四分の一がすごく長かった。
比較的大きいながらも、そこは地元の車が走る田舎道。
全行程の四分の三の時間を費やし、運転席と助手席は神経をすり減らしながら、ようやく今回お世話になる民宿に到着。

降りてとりあえず伸び。
目の前には以前と変わらないように見える海。何年ぶりかの潮風が気持ち良い。
とりあえず、荷物を部屋に運んで、一枚。
部屋から。(携帯)
宿の目の前は砂浜。
地元の子が泳ぎに来るくらいで、あまり整備されてないにもかかわらず、きれいな遠浅の砂浜。
「早く行こうZE!」とはしゃぐ中学生をなだめて、この地域に二軒しかない喫茶店で腹ごしらえ。
結構待たされてから、初体験のそばめしを喰らう。うまうま。

パパッと食べて、いよいよ待望の海へ。
準備体操は省略してとりあえず全軍突入。

緑。

底まで青く透き通っていた美しい海は、五年の歳月を経て、緑色ににごった海になってました。
きれいはきれい。ある程度水は透き通ってる。けど深く潜れば潜るほど緑色。
上から眺めてもわかるくらい、海底には種類不明の海草が繁茂してました。
わかりにくいけど、黒っぽくなってるところが海草。
前は一緒に泳いでいた魚群も、ほとんどありませんでした。

原因はコイツ
数年前に台風による高波の被害を受け、その対策として国交省が建設した外防波堤ケーソン。
確かに高波被害はなくなったものの、外海からの還流がなくなったおかげで、海は富栄養化。
海草が繁茂し、植物性プランクトンが増加したため、青い海は緑の海になってしまったそうだ。
このような事態を恐れ、地元では猛反対したそうだが、国交省は「既に決定済み」として建設を強行したらしい。
なんともやりきれない話。

以前よりも水質が悪くなっているとはいえ、大阪の二色浜や和歌山の産湯海岸、神戸の須磨海水浴場よりもはるかにきれいなので、結局3〜4時間ほど泳ぎまくり、この日は早めに海から撤退。
ザァーっと真水を被り、宿の温泉に直行、水着とともに念入りに洗ったにもかかわらず、なんだか塩っ気が抜けてない感じで、「やっぱり、海ってあんまり好きやないなぁ」とひとり思う。
晩飯まで時間をもてあまし、子どもたちでウノやら大富豪やらをプレイ。
五人で三世代くらい違うにもかかわらず、異常に盛り上がり、なぜか修学旅行を思い出す。
ゲームに関しては狡猾な弟を打ち負かしたので、かなり満足。(何

その後、カニエビ祭りだった五年前と様変わりした、ありきたりな夕食を食べ、五年前から全てが変わっていることを父と確かめあう。
五年前は、他に泊り客など人っ子一人いなかったのに、今は他にも二、三組。
方々で紹介されて、割と人が集まるようになったらしい。
食事もありきたりで、どっかの給食センターで作ったのを盛り付けただけに見えるし。
前の「とりあえず、あるもんだけ出しとこ」みたいな、インパクト満点の食事を期待してたため、がっかり。
父と二人でビールや缶チューハイを酌み交わし、食事も完食。
やたらテンションの高い子どもらをなだめ、明日に備えて早めに就寝。
久々のアルコールのおかげか、旅先ではなかなか寝付けない私もあっさり爆睡。


8月8日

「魚と戯れる離島での二日目」


今日は、柴山港の外海にある小島に渡る日。
小島と本州の半島との間の海が、今日の遊び場。
朝食をかっこんで、湿った水着を着て、いざ島へ。
島へ渡る唯一の交通手段。

朝八時。
釣竿と長い柄の網を両手に担いで島へ上陸。
ここもけっこう様変わり。
バーベキューするやつが増えたらしく、あちこちにごみが散乱。
客が来るので整備した結果、汚らしくなったというか。
そんな光景には目もくれず、とにかく海へ突撃。


この海は青かった!
2〜3m下も底まで透き通ってるし!
海草は以前より多いけど、なにより、そこらじゅうを魚が泳いでる!
やっぱりいいね、こういうの。
海とか川とか、「おれ、魚と一緒に泳いでる!」って感覚が大好き。
町のプールじゃありえないからな。

というわけで早速、手に網を持って、魚捕り開始。
泳ぎに不安がある小学生コンビはライフジャケットを着用。
泳ぐ必要なくプカプカ浮いているので、かなり楽しそう。
魚は5pに満たない小魚ばかりだけど、なかには10pを超えそうな魚もいて、なかなかに面白い。
2〜3時間ほど網を振り回し、十数匹の魚を捕獲。
別に食べようというわけでなく、鑑賞したかっただけなので、持参した水槽に入れてました。
弟が携帯で撮影1弟が携帯で撮影2
相変わらずみにくいですが、白と黒の縦縞の入った小魚やカワハギの稚魚、小エビ、一番大きい魚はカサゴかベラの稚魚でしょうか。
しっかし、携帯の写真はみにくいなぁ。
今更ながら、デジカメで撮っとけばよかったと後悔。

一通り魚を捕って、少し早い昼飯。
宿の人が用意してくれた、おにぎり弁当を食べる。
おにぎりが冷たくて硬い・・・・・・
弟はタツノオトシゴを捕まえたらしいが、水槽に入れるときに逃がしてしまったらしい。
惜しいことしたなぁ。

昼からは、まだ魚を捕まえる弟たちと離れ、ひとり海釣りの準備を開始。
実に二年ぶりの釣り。仕掛けをつける段階で既にワクワク興奮状態。
でも、岩場での釣りは初めて。仕掛けもよくわからん。
いちおうリールつきの投げ竿だけど、ウキ無しのいわゆるミャク釣り。仕掛けは簡単だけど、あまり魚が小さいと当たりがわかりにくいのが難点。
あーだこーだと結び方を思い出しながら取り付け、釣り場となる岩場へ。
エサは宿でもらった冷凍オキアミ。小針に一匹引っ掛けて、海に投じる。
一投、二投、三投。・・・・・・なんか飛ばない。
錘が軽すぎるのか、飛ばないばかりか沈みもせず、ふわふわと流れるだけ。
こっちから見えてては、魚も来ないかも。様子を見に来た父と交代して、錘を取りに戻ることに。
って、妹たちは弟どもに任せたのか。なんか心配。

荷物置き場にとって返し、釣具箱を漁っていると、岩場のほうで歓声が。
見ると、父が釣竿を掲げて手を振っていた。糸の先には10〜15pほどのべラ。
くそぅ、先を越されたっ!
悔しさをバネに、再び岩場へ。
父と交代して、父の言うポイントに投げ込む。
五回、六回、む!?
わずかに感じた当たりもむなしく、あっけなく糸が切れてた。
あぁ、せっかくの仕掛けが・・・・・・

次の仕掛けを取りに、いったん帰還。
付け直して、今度は渡し舟の船着場へ。
ためしにウキつきの仕掛けを投じる。
う〜ん。
錘が重すぎるのか、ウキが浮いてこない。
「錘を外すか・・・・・・」
そう思い、リールを巻くと、
ググッ
ぅお!?
「かかったのか」と思って様子を見ても、動き無し。

「地球」を釣りました。
またの名を「根がかり」。
ハオコゼ、ミノカサゴに次ぐ、わが釣り人生の三大敵のひとつ。
要は、単純に海底の岩とか、海草とかに針が引っかかって取れなくなっただけ。
文字通り、ごつい岩の上で「orz」の状態。悲しい。
仕方ないので無理やり引っ張って糸を切る。
二つ目の仕掛けを潰し、いまだ釣果ゼロ。
先に一匹釣った父の言葉が、反骨心をあおる。
見てろ、絶対一匹釣ってやる!

事前に作ってきた最後の仕掛け。再び岩場に赴き、糸をたれる。
――ククッ
キタっ!
何度味わっても、心地よい感覚。間違いない!
竿を垂直に上げ、リールを巻き上げる。

糸先にぶら下がるのは、わが釣り人生で五番目くらいに釣果の多いクサフグ。体長10p未満。

お前かぁー!
いつもなら外道扱いだが、今回は「とにかく釣る」のが目標。つまり、今回に限り君が主役だ!(何
すぐに針から開放し、リリース。元気よく泳いでいきました。
ありがとうクサフグ。今後も外道扱いだけど、よろしく頼むよ、我が友よ。(ぉ
その後、もう一匹別のクサフグを釣り上げ、リリース後に再度投げ込んだところで、糸が切れました。
結局、三つの仕掛けを潰して、釣果はクサフグ二匹。
数字だけでは物足りないけど、初めての磯釣りでの釣果に大満足。今後への課題は山積みだけどね。

結論。
サビキや投げ釣りだけでなく、磯釣りもきちんと勉強しよう。やはり海釣りは男のロマンだ!

荷物置き場に戻ると、遊び疲れたのか、子どもらもダラダラと海に浸かっているだけ。
時刻は午後3時半ごろ。もう遊びつくしたので撤収することに。
水槽の中の魚たちもリリース。勝手な言い分だが、無事に育って、釣り人を楽しませてもらいたい。
宿に戻って再びダラダラ。
昨日とは少し違う夕食。やはりカニは出てくる。
父と私は昨夜と同じように酒を酌み交わす。ビールがうまい。
夜はなんだかんだいいながら深夜ごろ就寝。


8月9日

「私だけ感動の三日目」


けっこう夜遅くに寝たのに、朝六時にはすっきり覚醒。
今日は遊ばずにただ家に帰る予定。
しかし私の希望で、帰る前に柴山から車で30分ほどのところにある、あるものを見に行くことに。
最近できたという道に対応していないカーナビに、迷子になりながら、何とか到着。

余部橋りょう遠望余部橋りょうと国道178号線の交差点余部橋りょう餘部駅方向
餘部橋梁鎧駅方向余部橋りょうの橋脚山陰線余部鉄橋列車転落事故慰霊碑

餘部鉄橋。
正式には「余部橋りょう」というそうだ。
JR山陰本線の鎧駅〜餘部駅間にある、長さ310.59m、高さ41.45mの鉄橋で、1912年開通。
百年近くの間、山陰本線を支えてきた産業遺産で、この鉄橋目当てに来る観光客も多いとか。
老朽化と安全性の問題から、現在新橋の架け替え工事中。新橋は2010年に完成予定。

とにかく高かった。長かった。大きかった。
こんなものを、百年も前に建てたとは、到底信じることができなかった。
テレビでしか見たことがなかったため、目の前の光景に感動して、体が震えた。
工事用の囲いで鉄橋に触れることができず、見た目も残念だったけど、「見に来て良かった」と思った。
この橋もそのうち解体されるらしい。一部保存も検討されているそうだが、この鉄橋はこのまま全てを残すべきだと思った。
一通り、鉄橋を写真に収めて、宿に引き返した。
――この鉄橋に出会えたことは、一生の思い出になる――と帰りの車で思った。

帰りの片道五時間の道を逆にたどり、無事に自宅に帰還。
途中のサービスエリアで食べた鹿肉丼がうまかった。牛丼の鹿肉版みたいな。写真撮るの忘れた。(ぉ

海、島、釣り、鉄橋。
なかなか充実した楽しい旅行だった。
父は「もうええわ」と言っていたが、私は機会があれば、また行ってみたいなと思った。

あのときのように、きれいな海で魚と一緒に泳いで、釣りを楽しめるところ。
そんな海をこれからも探していきたい。